続き

続きです

ま、難しく考えるとこいつは矛盾だらけになるんで、あまり難しく見ないでください


           クラウン・カイル

「…試作型は敗れたか…まあ、よい、奴は彼奴らを連れてきただけまだ役に立った…」
そう呟く、壮年の男、彼こそがこの事件の黒幕であるクラウン・カイルである、実際年齢は50代前半だろうが、その顔はもはや60後半にも見える、ただ、その眼光のみが狂気の光をたたえている
「…」
その眼前にある巨大なガラス管には連れ去られた行商人の姿があった
「彼奴で今の段階を試し、私は真の力を得る!そして王国の愚者どもに私の理論の正しさを証明してみせる!」
もはや正気を保ってはいないのだろう、目つきだけが狂気に光るその様は、一種の恐怖を招く、その恐怖におびえ、いうことを聞くしかない学生たちは次の調整体である、鳥にいくつもの獣を合成した調整体を檻ごと外に運んでいた…外気に触れ、目を覚ませばこの調整体もすぐに暴れだし人を襲うだろう…知能は先のものより低いが、その敏捷性と戦闘能力は先の調整体の比較ではなかった
「見ておれ…私を否定した全ての愚者に裁きを下してくれる!」
狂笑を上げるクラウン…もはやその頭にはミンツを、そして王国を滅ぼすことしかないのだろう…


ミンツ内、ギルド宿舎
「…」
ベッドから起き上がる彰
「朝飯食ったら行動開始か…」
ホールに下りる、すでに起きて厨房に入っているのはユニスー、彼は両ギルド間で最も料理の腕が立つ
「すまんが、俺にもなんか軽く朝食を頼む」
「彰か、解った」
彼の嗜好は理解しているとばかりに、白米と味噌汁、沢庵に梅干が出される
「いただきます」
両手を合わせ、定例句を口にする彰
それからゆっくりと朝食を済ませる、昼食には時間をかけない彰だが、朝食はゆっくりと食べるのが常になっていた、その理由は
「おはよ~」
「顔を洗って来い、まだ眼が開いてないぞ」
「うん、そ~する~」
などという、朝の会話のためである
「ごちそうさま…それじゃあ、今から俺は少し周辺を探索してくる」
「…解った、気をつけろよ」
と、数名に告げて外に出る彰
「…とりあえず、目星はつけたんだがな」
そのうちの一つ、ミンツから最も近い廃墟に入るが
「ここ数年は人が近づいた気配すらないか…」
人の気配の残滓も感じられなくなっている、扉には蜘蛛の巣が張り巡らされている
「周囲に地下への道がある気配もなし…外れか」
あくまで探索、とは思いつつ、次の場所に向かおうとした直後
「!」
彼の周囲が黒に染まる…
「上か!」
咄嗟に後ろに飛び、垂直降下してくる突撃をかわすが
「!」
直後に軌道が曲がり、嘴の一撃を受ける
「ぐっ…こいつを装備していなければ危なかったか…」
普段装備している鎧の下に鎖帷子を着込んでいたおかげでダメージは軽減できていた
もっとも、それを纏っていなければどれほどのダメージを受けたか解らない
「七夜月総員に通達!現在町外れの廃墟にて先日の合成獣の一段と思しき輩に襲撃を受けた!離脱は困難と判断したため、ここに総員招集をかける!」
数秒の無言状態、ギルド通信はギルドメンバー全員に届くが、「Flow Light」のメンバーには聞こえない
「了解!どっち側かだけ教えて!」
「西区出てすぐのところだ!っと!」
咄嗟に倒れこむようにして攻撃をかわす
「ぎりぎりまでひきつけてかわし続けるしかないか…危ない橋になるな…」
ここまでで相手がどう言う形かは判明したが、その戦闘能力から逃げることは出来ないと判断したわけだ
「ちっ、連中と合流するまで後何分だ…」
先ほどの一撃によって動きが鈍っている彰、だが、焦りを必死に押さえ込んでいる
「落ち着け…焦りは心を迷わせ、動きを鈍らせる…」
そう言い聞かせつつ、相手を観察する
「形状は鳥が一番近い、実際攻撃手段は嘴に頼った突撃だ、だが、他にも幾つかの獣が混ざっているようだな…」
合成獣としてはかなり完成度の高い調整体であり、敏捷性を生かした突撃はそれだけで危険な一撃である
「嘴そのものはさほど長くない、それに先ほどの攻撃も角度を変えたせいで速度が殺がれていたからこそ、これですんだということか…」
少しばかりの吐血、それでもダメージを軽く見ることは出来ないほどだったということだ
「…一意専心…受けてみろ!」
初めて刃を抜き
「!」
直上からの降下に対し
「真空裂斬!」
上に向かい回転斬りを行う剣技で挑む彰
「ちっ!」
「グアアアアアッ」
肩口を薙がれ、出血する彰、調整体のほうは翼に傷を負い飛行速度に衰えが感じられたが
「…高速回復…か」
だが、どうやら翼はいえても焼ききられた傷は完全には回復できないのか、飛翔速度はまだ落ちていた
「…最初から向こうが有利とはいえ…この状態は圧倒的に不利だな」
「治癒功!」
「!ドラ!?」
「裂空斬!」
先ほどの真空裂斬を横に向けて放つのを考えれば解りやすい、剣技でけん制するカスト
「カストまで…すまん、助かった」
「ウィニーグさんから連絡をもらったんですよ…間に合ってよかった」
「あいつらは…?」
「もうじき見えると思います、それまでは!」
「ああ…今ので解った、奴は翼に傷を受けると一時的に治癒のため行動不能になる、又は飛翔速度の著しい低下が見受けられた、級長かちしろが来れば術で翼を狙ってもらえるんだが…」
「そういうことなら任せて!ファイヤーボール!」
「級長!」
両の翼を焼かれ、一時的に動きが止まる調整体
「…奴は対抗能力に難点があるな、当たらない代わり、一度でも攻撃を受けると脆いんだ」
「洞察力は流石だね…大丈夫?」
「ああ…この二人に助けられたよ」
さらにのあの回復術で傷は治癒できた彰
「…今度はこちらの番だ!」
「といっても、降下してくる隙を狙わないと攻撃できないぞ…!」
「…先ほどはそれで一撃を打ち込んだのだがな…」
攻撃を迷っていたのでは勝利はつかめない、そう判断したのはいいが
「ちっ、さっきまでので警戒し始めたか…知能はそれなりにはあるようだな」
上空を飛び、下降する気配を見せない調整体
「ドラ、俺をあそこまで投げれるか?」
「難しいですね…」
「ある程度まで投げてくれれば、俺が技で補えると思うが…」
「試してみましょう、可能性があるならば」
「そうだな、頼む!」
ドライゼルが彰を上に放り投げる
「うおおおおおお!真空裂斬!」
さらに技で上に飛ぶ
「グゲエエエエエエエ!」
再度翼に直撃させるが
「…あ~…着地考えてなかった」
そういいつつ、再度回転する彰
「ふぅ…真空裂斬で落下速度を制御できたか…」
着地する、調整体は回復しながら落ちてくる
「「「ファイヤーボール!!!」」」
しかし、術の効果圏内に入った直後に、ちしろ、おたまん、アオナの術の直撃を受ける
「グゲエエエエエエ!」
飛翔も出来ず、回復も追いつかない状態で落下してくる
「後は任せろ!」
「飛燕連脚!」
「虎牙連斬!」
「閃空翔裂破!」
雨龍、リボルバー、ウィニーグの攻撃の直撃を受ける調整体
「しぶとさは一流だが、先のアレほどではないな!」
「回復は強制だから、攻撃を受けると確実に動きを止めるしかないということか…」
さらに、カスト、ユニスーの攻撃で地上に落ちたところに
「止めだ!」
彰がバスタードソードを突き刺す
「ふぅ…これでよしか…」
「ここが奴の?」
一息つくと、ウィニーグが聞く
「いや…違う、使われた形跡も残っていない、おそらくは別の場所から送られたのだろう」
「誰が相手か、ある程度目星はついたのか?」
「クラウン・カイル、おそらくはまだミンツのすぐ近くに住んでいるのだろうな」
「…例の一件の中心人物か」
「写しを見たのか」
「ああ、悪いとは思ったがな」
「いや、俺の仮定ではすでに使われなくなった家を使っているものと思っていたのだが…」
「ふむ…ありえない話ではない、ミンツ在住ではないだろうからな」
「だろ?というわけでしらみつぶしにしてるってわけさ」
「しかし、非効率的に過ぎないか?」
「それは重々承知だが、こうするより他無いだろう…今回のことは王国軍に知らせて、捜索はほとんど任せるつもりだけどな」
「そうしたほうがいい…後は王国軍に任せよう」
そして、王国軍も目星をつけた家屋を操作することにしたらしい
「後は任せるとしようか…」




その夜
「今度の調整体も失敗か…だが、彼奴は思ったよりもよく出来た…我が悲願達成のためにも…次で奴らを滅ぼしてくれる」
そう呟き、調整が完了した行商人…人型の調整体を解放するクラウン
「マスター、御命令を」
洗脳か、それとも刷り込みの一種か、完全に忠誠を誓っている調整体に対し
「今すぐ、ミンツの愚者どもを殲滅してくるのだ…手段は気にせずともよい」
「解りました…」
そう言うと、外に出て行く調整体であった
「ふ、ふはははは…はーっはははっはっはっは!」
高笑いを上げるクラウン、彼の計画ももはや最終段階に入ったといっていいだろう、試作体で満足に稼動したものは今の調整体を含めたったの三体、だが、得られたデータだけで完成に到ることは容易いのだろう…




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