第十七章

第十七章です

どうでもいい章に見えて実は必要な章だったりしますが
まあ、すでに解る人にはオチも見えてそうな気もする…
今回は登場人物少なめです
というかほとんどあやかしびとですな



              第十七章

【彰】
「ふっ、はああっ!」

アレから数日、もはや日課となりつつある朝練を行う
基本動作と焔螺子
これだけならば…九鬼耀鋼にも追いつけただろう…

【彰】
「ふううう…」

九鬼流――――肆式絶招――――内ノ壱

【彰】
「焔螺子!」



【彰】
「ふう…」

精度と速度は上がってきているのだろうが…
直接相手がいない状態の鍛錬では経験値もたかが知れるというものだ…

【菊理】
「お疲れ様です」
【彰】
「ああ、さんきゅ」

タオルを受け取る
といっても拭くほど汗が出ているわけでもない、この程度の動きで汗をかいているようでは到底師匠には届かないからだ
師匠を超えようなどという馬鹿げた妄想は抱いちゃいないが(いや、九鬼耀鋼を九鬼流で凌駕するなどどう考えても不可能だ)…
それでも、追いつける限りは追いつきたい
まあ、師匠の最大の強さはその戦術性にあるので、はっきり言ってそれは到底超えれそうもない
だからこそ、技量でぐらいは追いつきたい、たとえそれだけではかなわぬと解っていても、百回戦って負ける回数を60以下にはして見たいのだ
別にその40を勝てなくてもいい、勝利回数など二桁いければ十分すぎるだろう
ただ、負けないだけの戦いにはして見せたい
ちょっとした意地みたいなものだ

【彰】
「…デミウルゴスは?まだ動いてこないのか?」
【菊理】
「はい…」
【彰】
「ありがたいのか何なのか…」

おかげで双七もすべての絶招を使える程度にはなった
習熟など程遠いが、それに達するだけの経験は向こうでもつめるはずだ

【彰】
「…たまには手合わせも願いたいものだが」
【菊理】
「双七君だと一方的なフルボッコにしかならないからやらないんじゃなかったんですか?」
【彰】
「双七とじゃない、虎太郎とか、鴉とか、そういうレベルの格闘家が相手じゃないと」

午後になったらどっちかに頼んでみるか…

と思っていたのがあだになった、遊びに来ていた八咫鴉の付き添いの鴉と虎太郎

【彰】
「両方相手ってマジっすか…」
【鴉】
「ええ、手加減はいたしませんので、ご覚悟を」
【虎太郎】
「何、あの男ならこれぐらいなんとでもして見せるだろうさ」
【彰】
「はあ…」

しょうがない、構えを取る
九鬼流は捌きが主体、この二人の攻撃を捌き続けて活路を見出す他にあるまい

【彰】
「では…」
【鴉】
「参ります」

早い…!だが!

【彰】
「ぬぅっ!」
【虎太郎】
「遅いぞ!」
【彰】
「まだまだ!」

確かに二人同時に散華など撃たれた日には対処など出来るはずもないが、それでも何とか捌き続ける

【彰】
「ちぃっ!」

だが、このままではジリ貧と後ろに飛ぶことにした

【彰】
「ふうっ」

一呼吸、円転自在、球転自在の心得を思い出す
それと同時に再確認
大丈夫、頭は冷静だし、掌は乱れていない、まだやれる!

【彰】
「ふっ!」

感覚を研ぎ澄ませ、いかな速度で打ち込まれようと確実に捌く!

【彰】
「!」

一瞬で十を超える拳が来るが、捌く必要があるのは二つだけであることを瞬時に判断、後は無視してそれだけを捌く

【鴉】
「ほう…」
【彰】
「はあっ!」

さらに追撃で来る虎太郎を捌き、ついでに回し蹴りで鴉を狙う
無論かわされるが、間合いを開ければそれでいい

【彰】
「ふううううっ」

息を吐く、今のは…一体
自分でも解らないが、とにかく、確実に捌く必要があるのが二つだけだと瞬時に理解できた…

【彰】
「ふっ!」

だが、気にするのは後でいい、今は眼前の敵にのみ集中すればいい
もっとも、タイマンであれば反撃の糸口もあろうが、二人同時に相手では瞬殺されていないことのほうが奇跡的だ

【愁厳】
「ふむ…」

先ほどから外野で見学させてもらっているが…
戦闘の中で確実に成長している
一瞬前までの彰は牽制までも捌こうとして余計な動きが増えていた
だが、先ほどは牽制にとらわれることなく直撃するものだけを確実に捌いていた

【双七】
「すげえ…」

隣で双七君が驚いているのも無理はない
それほどの成長速度だということだ
すでに捌いた攻撃は百を超えただろう
体力的には鬼である彰に分がある、このまま捌き続けることが出来れば反撃も出来るのだろうが…

【愁厳】
「さて、どうなるか…」

再び攻防が開始された、先ほどに比べてはるかに捌きに余裕が見える彰
攻撃する側のほうはすでにある程度以上の消耗を強いられていることもある、これが今の彰の余裕の部分かもしれないな

【彰】
「ふっ!」

先ほどの猛攻に比べれば若干速度が衰えてきているのが解る
やはりそこは体力差が出ているのだろうか

【彰】
「はあっ!」

だが、こちらからの攻撃はことごとくかわされる
あまり大きな攻撃は打てない以上、小技でさらに体力を削りに行きたいところだが、そんなことは向こうも承知のようだ
だが、攻撃にかかる隙を突いてくるだけの余裕が今向こうにはない、そう見せかけているだけかもしれないが、少なくとも反撃は来ていない

【彰】
「はっ!」

今度は以前双七にやったのと同じように捌く掌打で衝撃を浸透させる
もっとも、この速度での応酬ではあのときのように完全にとは行かない

【鴉】
「ふむ…」
【虎太郎】
「ほう…」

一度お互いに間合いが開く
何とか衝撃を浸透させることは出来たが、実際には少し痺れる程度でしかないだろう
まあ、それでも技が鈍るのは事実なので間合いをあけたのだろう

【彰】
「…」

問題はこちらのほうだ、はっきり言ってそろそろ集中力がヤバイ
先ほどまでのように正確に見抜いて捌くという芸当が後どれほど続くか解らない
…これを時間単位で可能にしていたんだよな…あの師匠は
本当に人間業じゃない、集中力には必ず限界がある、時間単位その集中を続かせるなど…

【彰】
「…」

再び円転自在、球転自在を心がける
今の俺に出来ることは捌き続けるぐらいしかないからな…

【鴉】
「はっ!」
【虎太郎】
「はあっ!」

二人同時…しかし、鴉は全て牽制で本打ちは!

【虎太郎】
「白狼!」
【彰】
「させるか!」

何とか捌く、確かに、八咫雷天流の中にあって最速の一撃…
反応速度が後わずかでも遅ければ吹っ飛ばされていただろう

【彰】
「ふっ!」

だが、ここで隙が見えた

【彰】
「焔…螺子!」

鴉の牽制便りの大技だったこともあり、虎太郎自身は白狼の使用で動きが止まっている
確かにこのまま行けば何発かは鴉からもらうだろう、だが

【虎太郎】
「ぬ、ぐ…」

虎太郎がダウン、こっちは計十発ほどあまり軽くない一撃をもらっているが、戦えないほどじゃない

【彰】
「…」

構えなおす
体力は相当削られたが、集中は不思議と続いている

【鴉】
「はっ!」

確かに早い、だが、それだけの拳では九鬼流は敗れない

【彰】
「ぬうっ!」

それに、いかに妖怪とはいえ老いには勝てん
ダメージがある分俺のほうがいくらか不利ではあるが、疲労度では向こうのほうが上だろう
元々が鬼の人妖、耐久力には自身がある

【彰】
「おおおおおおお!」

故に、見えるし捌ける
もっとも、現状それだけだ、向こうが疲れて一瞬でも攻撃の手が休まればその瞬簡に一撃を叩き込めるのだが…

【鴉】
「ならば…参ります、散華!」
【彰】
「ちっ!」

捌ききれるか…否!
捌ききるのみだ!

【愁厳】
「よくあそこまで持つな…」

はっきり言って片方倒せたというだけでもかなりのものだ
その上何発かもらっていながら未だに捌き続けている

【双七】
「先生よりもタフかも…」
【愁厳】
「まあ、鴉さんも速度が落ちているのはわかるが…」
【虎太郎】
「痛て…彰め…手加減はしてたんだろうが、かなり精度が増しているな」
【双七】
「虎太郎先生!」
【虎太郎】
「ずいぶんと捌きに磨きがかかっているな、アレが本来の九鬼流ということか」
【双七】
「ここ最近の彰の成長すごいからなあ…」
【愁厳】
「やはり、菊理君という存在がメンタル的な面で大きな影響を及ぼしているようだな」
【虎太郎】
「惚れた女を守るため、か…理由としては悪くないな」

改めて視線を戻す、アレだけもらっていたにもかかわらず、彰の捌きにはよどみがない

【彰】
「ふっ!」

捌き続ければ向こうも疲弊する、なんて甘い考えを抱いていた十分ほど前の俺を殴ってやりたい
鴉…さすがに妖怪というだけはあるか…
だんだんと捌きにも余裕がなくなってきている、先ほどに比べ明らかな牽制まで捌くようになり始めてきた
それでも…捌けているだけまだましだ

【彰】
「くっ!」
【鴉】
「むう…」

お互い、一度間合いを開ける
さすがに両者とも肩で息をするようになっている
見た目の疲労度では…鴉のほうが若干上か

【鴉】
「やれやれ…年はとりたくないものですな」
【彰】
「…」

軽口に返す余裕など俺にはない
今は少しでも体力を回復し、集中力を回復することだ

【彰】
「ふっ!」

息を吐く、大丈夫だ、まだ集中力は途切れていない
手は綺麗に…
心は熱く…
頭は冷静に…
大丈夫だ、今のところどれにも乱れはない

【鴉】
「では、こちらも限界が近づいてまいりましたので…本気で打ち込ませていただきます」
【彰】
「!」

散華か!

【彰】
「くっ!」

有効打だけは打たせない!

【彰】
「おおおおおおっ!」

そして、一瞬だけだが、攻撃に隙が出来た

【彰】
「!」

掌打を使うのは危険と判断、とっさに蹴りを打ち込んでみる

【鴉】
「む…!」

判断正解、俺が掌打を引くなりなんなりするのを待っていたのかもしれないが、ほとんど体制を崩さずに撃った蹴りに対して反応が遅れた鴉は何とか防ぐものの、今度こそ、本当に…

【彰】
「ふっ!」

瞬時に踏み込み、一気にゼロ距離をとる
九鬼流―――――肆式名山―――――内ノ肆

【彰】
「焔槌!」

これで、鴉もダウンする

【愁厳】
「やったな…」
【彰】
「ああ…まさか八咫雷天流の二人を相手にここまで出来るとは思ってなかった」
【双七】
「すげえよ彰!」
【彰】
「師匠にまた一歩近づけたか…」

はっきり言って勝てるとは思っていなかった
ただ、師匠の教えを己に刻み込んでいった結果がこの勝利だったというだけだ

【虎太郎】
「お前さん、途中から牽制が見えてなかったか?」
【彰】
「…気づけばどれを捌けばいいのかが解っただけだ」
【虎太郎】
「ま、あの男に近づいてきてるのは間違いないな、守るものが出来たからか、それとも最後の授業を受けれたからか…あるいはその両方か、とにかくお前さんは強くなってる、それだけは確信を持っていいぞ」
【彰】
「…まだまだ師匠には及ばんさ…師匠はあえて牽制まで捌いてその勢いで相手の動きを封じるからな…」
【双七】
「前に彰が使ったアレか…」
【彰】
「アレだけの速度が相手では俺では不可能だが、師匠ならばやってのけるだろう」

俺も昔の手合わせでは何度も腕が痺れてる間に吹っ飛ばされた経験がある
アレが衝撃の浸透だと知ったのは実は赤い夜での最後の手合わせのときなのだが

【彰】
「双七はもう少し訓練がいるな…虎太郎、その様子ならまだ余裕はありそうだし、存分にしごいてやってくれ」
【虎太郎】
「解った…ということだ、如月、やるぞ」
【双七】
「げえーっ!?」
【彰】
「俺はさすがにもらい過ぎて体が痛いんでパス」

十発分が今になって響いてきた…
戦闘中に張り詰めていた糸がぷっつりと切れたせいだろう…

【彰】
「…菊理にヒーリングしてもらおう…」

痛みを引きずりながらその場を去る俺だった

【双七】
「うわああああああ!?」
【虎太郎】
「甘いぞ!如月!」

後ろから聞こえる声はとりあえずスルーしておこう…

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