第五章

連続公開ですが…

先に↓の第四章をお読みください

ええ、第四章とこれはつながってます、一応繋げると恐ろしく長くなるので分割しました

ツカサ以下、龍刻のメンバーが消えているのは仕様です、後半でまた復活しますがww

なお、OVAと原作を微妙に混ぜ合わせているため、少々時間的な矛盾が生じていますが、そこは無視してくださると助かります…

というわけで、第五章 sweet songs forever

公開します

         ~第五章~   Sweet Songs Forever

翌朝、士郎からとんでもないことが言い渡された
「しばらく、翠屋でバイトをしてみないか?」
「「は?」」
俺とトウカ、二人をバイトとして雇おうというつもりらしい
「ちょっと待て…俺にウェイターをやれと?」
「もちろん、そのつもりだよ」
休日なので、忍や恭也、美由季も店に出るということだ
「まあ、気楽にやることだ…」
支給された制服を着てみる
「やれやれ…」
「そういう顔しない!お客さんをリラックスさせるのが仕事なんだから…」
「はは…努力するよ…」
苦笑しつつ答える
「昨日のことなんか忘れなさいよ?そうでもしないと潰れちゃうから…」
「解ってるよ…」
記憶操作の術ぐらい身に着けておくべきだったな…
「まあ、いいか」
正直、俺らの業界で、仕事の後の達成感を味わうのは難しい
「しかたない…」
愛想笑いを心がけるしかないようだが…
「難しいって…」
それでも、営業時間は来てしまった
「「「「いらっしゃいませ!翠屋へようこそ!」」」」
精一杯の愛想笑いで、客を迎え入れる
「シュークリームセット、アイスコーヒーですね、かしこまりました!」
にっこりと微笑み、カウンターまで戻り
「桃子さん!シュークリーム、アイスコーヒーとセットでひとつです!」
店長は士郎だが、オーダーを伝えるのは桃子さん…(さん付けなのは、店だから云々は関係ない、尊敬からくるものではないのは確かだが…気づけばつくようになっていた…)
「すみません!オーダーいいですか!?」
「はーい!ただいま!」
にっこり笑って、客の前に
「ショートケーキのセット、アイスコーヒーで」
「かしこまりました!」
オーダーを伝える、この繰り返し
「とりあえず、一番忙しいのは終わったかな…?」
三時を過ぎ…五時ぐらいになってようやく客足が途絶える
「閉店は6時だったな…」
後一時間は…休憩時間のようなものとして扱えるかな…?
「おつかれさん、少し休憩にしようか。」
カウンターに座り、コーヒーを飲む…
「喫茶店の仕事って思ったよりハードなんだな…」
背もたれにもたれかかり、息を吐く
「はは、慣れればまだ楽なほうさ…」
俺がなれることがあるのかね…ただ…戦闘から退いた後はこういう仕事も悪くないかもしれない…士郎が喫茶店をやってる理由が解った気もする
「そういえば…五日後だったな…クリステラソングスクールコンサート…」
「ああ、チャリティーになってるんだよな…時空変動からようやく落ち着いたから再開ってところかな?まあ、回れる国は相当限られるけどな…」
少しだけ、聞いてみたいとも思っている
「それなんだが…お前から見て今この国は大丈夫だという国はあるかい?」
「難しい質問だな…今じゃどの国も危険であるということに変わりはないんだがな…」
それは実を言えば日本も例外ではない…永世中立を謳う国のほうが圧倒的に狙われやすい世の中だ…それなりの武装を持つようにしたほうがいいかもしれないな…
「いずれ…何カ国かで、同盟を結ぶ必要はあるだろうな…トゥスクルとエレンシアのように…こちらとしても後数国、同盟に加えるべきとは思うが…」
外交関係は概ね、ベナウィと、エルルゥに任せきりだ…うちは皇があれだし…仕事サボる癖は…俺以上といって過言ではないだろう…
「そういった同盟は他国に対する抑止力にもなりうる…数が多ければ、その国に攻め込んだときに払うツケも大きくなるからな…」
「他の同盟国にたたかれるのが落ちだから、か?」
「ああ、たとえその国が多少押されたとしても、すぐに増援が送れるような形を築ける」
そうすれば…よほどの馬鹿が指導者でもない限り、戦争はおきにくい
「ならば!その同盟に日本を加えることは!?」
「できなくはない…ただし…非武装国家との同盟数があまりに多くなると…今度は同時侵略という形をとられかねない…そうなると…一気にたたかれるのが落ちだ…」
そのときに店に客が来る
「いらっしゃいませ!…なっ!?ガヤック!?」
「久しぶりやなあ!なかなかにおうとるやないか!」
「笑いこらえながらいっても説得力ねえよ…注文は?」
「どういうもんかわからへんのやけど?」
「適当にお勧めか、ただの雑談かどっちか選んでいただけますか?」
営業スマイル(0円スマイル)だ
「適当にお勧めで」
「今日のお勧めは…翠屋特性シュークリームのセットになっております」
「ほなそれで」
「お飲み物はなんになさいますか?」
「せやな…」
といっても…メニュー見て解るとも思えない
「よければ、こちらで決めましょうか?」
「頼む、何がなにやらわけがわからん、このジュースっちゅうのが果汁飲料やということぐらいや…」
「だろうな…」
トゥスクルの連中もここ来たときは同じような顔してたよな…
そこに、そのトゥスクル勢もくる
「くっ、ははははははは!!!!」
「入店最初に馬鹿笑いするような客は帰ってくれ…」
「いや、ははは…すまん、つい、くく、面白くてな…」
「悪かったな!ガヤックはかみ殺したってのに…」
そして、トゥスクル勢はおのおの、自分の嗜好に合わせて注文
「いつの間にこっちの食いもんの味覚えたんだよ…?」
俺はもともと、今から10年前後前というだけだからまだ解ることに不思議はないが…
「いやな…忍さんが毎日連れてきてくれてたんだよ…」
「そうか…すまなかったな、後でその分の代金払う」
「だったら俺にも初日分払ってくれ…上からは落ちなかった!」
幹也が言うが
「それは断る、どうせ俺らの給料から天引きされてんだろうが…」
「そうだけどさ…」
「しっかり取ってるんじゃねえか!」
まったく
「桃子さん!シュークリーム3つ!ショートケーキ2つです!」
ショートはドリィとグラァ、それ以外がシュークリーム
「アイスコーヒー2、アイスティー、レモンが一つでミルクが二つ!」
「こんな会話しつつもしっかり注文とって覚えてるんだもんなあ…」
「ああ、軍やめたらここで働くってのも将来の選択肢に加わったぜ…」
まさしくそのとおりである、どうにも肌に合ってるようだ、この仕事も
「そういえば、ただ飲み食いに来たわけじゃねえんだろ?ガヤック…」
「せやな…そっちの同盟についてやけど…」
「俺からはなんとも言えん…そこらへんは…!」
「どうした?」
「オボロ、ドリィとグラァは残っていいが…今すぐトゥスクルに一回戻って、エルルゥつれて来い!」
「了解…そうだな!」
今の言葉だけで意味を察してくれるあたり、オボロもなかなか、解るようになったじゃないか…エルルゥさえいれば同盟について詳しいことが話せる
「現在うちの国の外交は、ベナウィとエルルゥに一任されてるからな…戦が始まっても、薬師ならば、ウルトリィがいるし…しばらくはエルルゥがこっちきても大丈夫だ…」
注文の品をテーブルに届ける
「ほれよ…」
ガヤックは、少しトゥスクル勢の動作を見て、どう飲み食いするか認識したようである
「苦いな…」
「そこでこいつを食ってみろ」
「ほう…」
シュークリームの甘さと、コーヒーの独特の苦味が互いに中和されるかのように引き立てあい、ちょうどよい甘みと苦味、少しばかりの酸味が残るというわけだ
「なかなか、美味いなあ…こういう菓子が世の中にはあるんやなあ…」
「そうだな…」
オボロはさっさと食い終わったかと思うと
「今からトゥスクルに戻って、エルルゥをつれてくる、アルルゥやユズハもつれてくるか…これを食わせてやりたい…」
「そうだな…一度桃子にはトゥスクルに来てほしいぐらいだ…向こうの人も喜ぶだろう」
「それはいえてるかもな!じゃあ、この二人は任せたぜ!」
脱兎のごとく駆け出し、見えなくなるオボロ
「屋根づたいに行くか…まあ、それが一番正しいのだろうが…」
あと…ムックルついてこねえだろうな…アルルゥはまだしも、あれがくると…
「大丈夫だよな…」
そして、二日後にはエルルゥとアルルゥ、ユズハに加えなぜかカミュがついてきた
「桃子さん!シュークリーム4つ!俺のおごりでお願いします!後はオレンジジュース二つとアイスティー、ミルクで二つ!」
「はいはい♪」
手際よく用意されたその品を、待ってる四人に運ぶ
「アルルゥとカミュにはオレンジジュース、エルルゥとユズハには、アイスティーな」
各人の前におき
「後はこれがこっちの菓子だ」
シュークリームをそれぞれの前に
「ユズハの病…今は相当落ち着いたみたいだな…」
時空変動で俺たちに起こったいいことの一つ、ユズハの病に回復の兆しが見えたことだ
「そうだな…今は、こうして普通に旅もできる…俺はうれしい…兄者も戻ってきた、ユズハの病も…こうして治り始めてる…」
「まだ安心はできないけどな…」
そう…今でもたまに発作が起こることがあるが…薬ができるころには勝手に収まっているのが現状だ…このまま回復すれば…俺たちの肩の荷も少しは下りるというものだ…
「兄者や、トゥスクルさんはエルルゥが来ることを条件に許可してくれたからな…」
「本当に…いい皇やいい薬師に恵まれてるな…俺たちは…」
「おかわり!」
「アルルゥ!」
「いいのよ、桃子さんサービスしちゃうから!」
今度は、ショートケーキとモンブラン
「ユズハ…口をつけてないようだが?」
「そうでしたね…いただきます…」
一口、ミルクティーをすすり
「美味しい…」
その後、シュークリームを一口
「これも美味しいです…」
「そう…」
「他の連中も食えよ…そのために呼んだといって過言ではないのだから…」
エルルゥ以外は全員そのため
「うん、じゃあ、私も!」
一口かじり
「美味しい!これなんていうの!?」
「シュークリーム…こっちの菓子だよ…正確にはこの国が前あった世界のほかの国発祥の菓子で、洋菓子というんだ、アルルゥの前に並んでるやつはみんなそうだな」
「美味しいです…このお茶も、お菓子も…こういうお菓子がどの国でも食べることができればいいんですけどね…」
「そうだな…一度ご教授願いたいぐらいだよ…エルルゥ!教わってみたらどうだ?」
「そうですね!トゥスクルで作ったらみんな喜んでくれるでしょうから!」
「桃子さん、いいですか?」
「もちろん!国に戻るころには一人前のパティシエにしてあげるわよ?」
「パティ…シエ?」
「菓子職人のことだ、洋菓子の職人はそう呼ばれる」
桃子さんの技がエルルゥに伝わり、それがトゥスクルで広まる…
「考えてみれば…桃子さんがトゥスクルで菓子作りの講義開いてくれれば助かるんですけどね…」
「お店のこともあるし…無理よ~。」
「解ってますよ…だからエルルゥを呼んだんです」
「それがメインちゃうやろ!?」
「いらっしゃいませ!こちらの席でよろしいですか?」
「ええけど」
席に着くと
「ほな、モンブランと、アイスミルクティー」
「かしこまりました!桃子さん!モンブラン、アイスミルクティー入りました!」
「で、同盟のことはそっちの嬢ちゃんがやっとるんやったか?」
「そうだ…エルルゥ」
「はい、同盟ですね…そちらの国の代表はどなたですか?」
「ワイがその代表や、あの後国内でクーデター起こしてな、非戦闘国家、ただし、武装国家であることに変わりなしっちゅう形にしたんや」
「ほう…その割には登場が早かったが?」
「そりゃあなあ…国王が開始初日に降参して、次の日には新しい皇がそうきめたんや」
「それだけ、国民が今回の戦闘に不満を持ってたということか…」
「いいでしょう、ただ…調印は…せめてそちらの代表が二人はいてくれないと…こちらは私と、彰さんかオボロさんが調印すれば終わりですけど…」
「外交担当やったら、じきにくるで?その前に調印結べるんかの確認したかっただけや」
「それならば、問題はありません、後日、その代表の方とお越しください」
「この店にでいいわよ?」
「日本と同盟結ぶにもそれなりの人選が必要だな…外交担当の大臣と、後は…何かしら重役がいなければ調印は結べない…日和見主義というか…頭固い人物がそう簡単に落ちるかな…?」
「国民投票で決めることになれば決まりだがな…」
「解った…どうにかしてこの国の総理大臣と話し合いたいものだな…」
「それなら…書物なり何なり…」
「そうだ!ハクオロさんからこれを!」
「どれ…」
おい…トゥスクルの文字で書いても解らんっての!
「あとで俺が書き直すが…なるほど…こういう腹だというのは理解したうえでか…」
「さすがは、我等がハクオロ皇だな…お見通しってことか」
その内容は
「トゥスクルとエレンシアの同盟は貴国にその意思があるならば、わが同盟への加盟を望むものである、そちらにこちらの使者を送るので、よろしければ調印を…(以下云々)」
「なるほど…それならば…日本国王に見せれば…」
「いや…直接使者として読んだほうがいいな…これは…」
そして、翌日には、式典用の衣に身を包み、国会議事堂へ
「以上が、我等の国、トゥスクルの皇である、ハクオロ皇の意思であります」
「確かに承りました、確かにこの戦時下、同盟を結ぶのは重要なことでしょう…」
「では、調印には賛同していただけるのですね?」
「かまいません、が、国民の総意を取らなければいけません、ですので、一ヶ月の猶予をいただけますか?」
「できる限り早急にお願いしたいところではありますが、急な頼み、解りました」
「できる限り早く返事はさせていただきますので…」
「解りました、私どもは数日こちらに残りますので、その間にご連絡いただければ」
「承知いたしました、では、これにて…」
少々逃げ腰だったようだが…
「さて…仕事は終わったし、また翠屋でバイトでもするか…」
「私は、明日から桃子さんにお菓子作りを教わるんです…楽しみだなあ…」
「そうだったな…まあ、あれだ、クリステラソングスクールのコンサートでも聴いてみようか?俺たちのほうじゃ歌も儀式か、子守唄ぐらいしかないし」
「そうですね…いろんな文化が発展してるんですね…この国があった世界は…」
「そうだな…その分、武器なんかも開発が進んで…殺傷率ははるかに高くなった上、誰でも簡単に手に入れることができるようになって…ある意味では、こっち以上に混沌としていた…そう思うこともたまにある…だけど、この国はそうじゃないからね…」
だから…脅迫状が届いたなどと聞いたときには驚いたね
「コンサートに脅迫状?」
「ああ、先ほど連絡があった、コンサートを中止しなければ、当方は襲撃することも辞さないと…」
「おそらくは…ただの嫌がらせの可能性が大きいが、こちらに来るには、専用の飛行機で、さらにガードをつけて来るそうだ…一応、俺たちも出たほうがいいだろうな」
「僕も同感だ、そこで」
「みなまで言うな、俺も手伝おう」
部屋に戻り、武器のチェック
「一応、手入れはしておかないと…な…」
すべての武器を磨き終わったころ
「彰…いるか?」
「ああ」
士郎と恭也か
「明日のことか?」
「ああ、こちらについてすぐに護衛につく」
「開始は…到着した翌日だったな…」
「ああ…」
つまりは…二日の警護
「たぶん、悪戯、冗談の類ではないだろう…」
「やはりそう思うか?」
「ああ、おそらくは…こちらにもともとあった国によるものだろう…」
いまだに戦争をやめたがらない連中が多いんだ…こっちは
「まあ、そうなると、武器は両方とも刀や槍の類になるからな」
「銃器は厳禁だろうけどな…」
「もっとも、こちらが使う分にはどうでもいいかもしれないが…できればもう二度と表に出てはほしくないものだな…あんな殺戮兵器は…」
俺は銃器反対人間だったりする、俺が刀や刃物で銃器に勝てる流派である御神流に固執したのはそれが理由だ…刃物に固執するのは、それが引き金となってるだけだ
「まあ、それが広がりさえしなければ…あまり大事にはならないんだろうけどな…」
「一応、銃器は極力使用しないで、われわれ、御神の剣士に任せてくれと言って置いたが」
「そうしてもらえれば助かるよ…最も、トゥスクルの人間にも手助けはさせるけどな」
人選は今いるメンバーでいいか…
「ああ、その代わり、うちの国の非戦闘員にも歌を聴ける場所を用意してやってくれ」
「それはもちろん、舞台裏という特等席で」
「まあ、いいんだけどな…」
「あと…美由季の母親も来てくれるそうだ…」
「どういうことだ?」
「ああ、君は知らないんだったね…美由季の本当の両親は僕と桃子じゃないんだ…」
「そうだったのか…どうりで、どっちにも似てないと思ったぜ…」
「それでね…母親の名は御神美沙斗、不破流の後継者だ」
「そういや、お前は正統だったな…しかし、どちらも自分の子が流派つがねえのかよ…」
「そういえば…そういうことになるね…」
「完全に不破流だけどな…俺も。」
そして…翌日
「ようこそ、お待ちしておりました、クリステラソングスクールの皆さん」
「あなたは?」
「士郎から依頼されて皆様方をお迎えにあがりました、七夜彰と申します、こちらへ」
車を止めてある場所へ
「そちらの方々がガードの方ですね?お勤めご苦労様です。」
「ふむ…君か、昨日、兄が言っていたのは」
「美沙斗だったか…?そのとおりだ」
「ああ、初対面から呼び捨てか」
「あいにくだが、さん付けは性分じゃない、そっちも呼び捨てにしてくれ」
車の一台、フィアッセ・クリステラと警備のエリスが乗る車に同乗する
「一応、最大の警備対象はあなたなので…ティオレさんの意向もありますし」
「ところで、やっぱり武器はその刀なんだな…」
「俺はトゥスクルの武人だからな、それに、あんたらがぶら下げてるようなもんはこっちの世界にはねえんでな、使われても困る、広まっては大事だ」
「解っている、相手が使わない限りはそちらに任せる、そういう契約だ」
「ならばいい…あまり銃は好きじゃない…死人しか出ないから…」
刀ならば峰打ちもあるが、銃では殺すのみだ
「それは解ってる、だが…確実だ」
「あの~、こういう空気はちょっと…」
「ああ、すまん」
「恭也たちはくるんだよね…」
「先にホテルで待機してますよ、食事のときには合流できるでしょう」
出迎えに来る可能性もありますけどね、と付け加える
「そうだね!」
移動中も、周囲の気配には気を配る
「今のところは何もなし、か」
「このまま何もなければいいのだけれど…」
そして、ホテルまでは何もなし
「今のところ周囲には誰もいないようだ…気は抜けないけどな…」
部屋に入り
「ここがフィアッセの部屋になっている、隣がティオレさんだ、俺はこの上、美由季はここの隣だ」
それぞれが一度部屋に入り落ち着いたところで
「それじゃあ、しばらくこの部屋はそちらにお任せしますね」
いったん部屋を離れる
「彰君…だったね…」
「呼び捨てにしてくれ、一応、国の人間には様、それ以外でもさん、までは許してるが、君は認めてないんでね…」
「そうだったのか…すまない…」
「別に、言ってなかったこっちも悪いんだしな…で、何のようだ?」
「君は…一刀流の不破だということだが?」
「ああ、一応、小太刀二刀御神不破流も…皆伝まではいったけどな…」
苦笑する…一刀流を早い時期に極めただけのこともあり、二刀流まで学んだのだ
「そうか…いろいろと興味深い存在だな…君も」
「ただのトゥスクルに仕える将の一人だよ…少々いろいろな世界について詳しいだけの」
「そうは見えないけどね…君がそういうのならそういうことにしておこう」
「で、それだけか?」
「いや…他のみんなは?」
「案内しよう、どうせ今から行くところだ」
士郎あたりに交代してもらおうと思っていたからな、ここまでは俺の仕事だ
「そうか…」
ちょうど真上の部屋が、御神の剣士の部屋になっている
「まあ、俺と美由季が一人部屋で、恭也と士郎が同室だけどな」
士郎と恭也の部屋に入る
「士郎~下に客人は連れてきたぞ、交代しろ~」
「解ってるよ…周囲の状況は?」
「今のところ、何も、入ってくるときも監視はいなかった」
「解った…久しぶりだね…美沙斗」
「兄さん…久しぶり…」
「母さん!?」
「美由季…」
親子感動の再開に水をさすのもなんだし、俺はさっさと部屋に入ってベッドに転がる
夕飯の時間までは仮眠が取れる…きっと…
まあ、睡眠開始一時間程度でノックに起こされたのだが…
「ごめん!寝てた!?」
「一応な…仮眠ぐらいとらねえと貫徹で見張りなんてできないだろ…」
「ごめん…」
「まあ、深夜交代で許してやる、で、何のようだ?」
「うん…少し…みんなでお話したいなあ…って」
まあ、その必要はあると思っていたが
「解ったよ…」
あくびをかみ殺し、となりの部屋へ
「すまない、起こしてしまったか?」
「いや…それに、篭城に比べれば…護衛など楽なものだ」
とりあえず、ベッドに座り、昼からずっと考えていたことを提案する
「取り合えずだ、今日の夜は交代でフィアッセとティオレさんの部屋の前につくってことでいいな?」
「ああ、そうしようと話し合ってたところだ」
「俺はほとんど常駐するつもりだが…一応二人以上でたつようにしたいから、俺と恭也の組はほぼ常駐の組で、一回だけ交代、他はそれぞれで交代時間は決めてくれ」
「何で俺なんだ?」
「今の段階で、その役が務まるのがお前か美沙斗しかいないってことだ、で、徹夜はお肌の敵だからな」
「そうだな…まあ、俺が適任なのはわかるが…」
「最後の冗談はさらりと無視かよ…まあいいけどさ」
さすがに俺も本気であんなことを言いはしない
「トウカは今日一日は休憩だ、明日の移動中は任せる」
俺は後半から立つつもりだ、車での移動中に寝ればいいし
自らの感覚、俗に言うところの第六感を刃以上に研ぎ澄ます
「とりあえず、もうそろそろ食事じゃないか?」
「もうそんな時間か…下に行って来る」
ちなみに、俺とトウカの部屋(結局同室)はフィアッセの部屋の真上だ、いざとなれば窓をぶち破ってでも上から入れるからな…恭也と士郎の部屋がティオレさんの真上だ(実戦経験の多さというか…下の階までならロープなしでも飛び降りるぐらいには鍛えてある)
「そう…なら、食堂に行きましょう、恭也たちは?」
「先に向かってるから…ついたころだろう」
食堂に着くと
「恭也!美由季!」
早速二人に飛びつくフィアッセ
それを横目に見ながら、食事の形式を見ると
「立食か…恭也と美由季は一緒に行動したらどうだ?俺は余計な気を回してしまうかもしれないからな…」
当然、言外に、恭也と美由季は、この二人の食事中に警護を頼むという意味合いも含めてる、まあ、俺では余計に気を使わせたり使ったりしてしまう可能性が大きいからな…
「俺はトウカと食事してくる…どうにも、こういうのには慣れてないだろうからな…」
もっとも、慣れてないのは、俺も同じだ
「俺がいた当時にはこんなもんなかったからな…こっちの常識を一部知ってるだけではなかなか…なれる事は難しいが…」
トウカよりはましだ…
ということで、トウカの隣に行き
「はは、やっぱ、こういうのは苦手か…」
作法を教え、とりあえず、一緒に食事
「彰…今日は何か起こると思うか?」
「いや…今日は何も起こらないだろう…起こるとすれば明日だ…」
一種の予感だが…戦闘モードの俺の感は妙に当たるのだ
「ついでに言えば…間違いなく明日は何かがある…」
これは確信だ…今までの経験がそう語っている
「まあ、今は食事を楽しもう…」
といっても…食事を楽しむなどという余裕があるわけもなく、ほどほどにして、後は無駄に会話し、早めに部屋に戻る
精神集中し、それが終わると、仮眠
「そろそろ時間か…」
少し早いとも思ったが、交代する
「さて…どうしたものか…」
とりあえずまじめに警護はするが…警護といっても何をやれというのだろうか…
とりあえず、寝さえしなければ大して問題もないようなので、周囲の気配を探る
「起きてるか?」
「ああ、今にもたったまま寝そうなぐらい何もないがな…今は半径50m圏内の気配を探ってるが…それですら何も引っかからないからな…何も武器を持っていないただの一般人しかいない…まあ、俺にわかるのはそれぐらいか…」
「どうしてそんなことが解るんだ?」
「窓は閉めるなよ?風が教えてくれてるんだから」
「風の声を聴いているとでも言うのか?」
「そのとおりだよ…まあ、あんたらは否定したいだろうけどな…長い間戦場に立っていると、そういう特殊技能を身につけることもある…」
「そういえば、お前はトゥスクルの武将だったな…?」
「ああ、体温や、呼吸の音などで…まあ、風向きがよければそれぐらいの距離はわかる」
さらに言えば…条件さえよければ…1キロ範囲は届く
「そうか…本当の戦場にたったことがなければ…わからないのかもしれないな…」
「トウカもそれほど範囲は広くはないが、探知は可能だぜ?」
戦場に向かうというなら、それぐらいの気配探知ができずして、長生きはできない…不意打ちに対処できないからな…
「まあ、今日は何もなさそうだが…念のため入り口付近を重点的に気配探知しておく」
「頼む、今のところは外からの進入が一番危険だ」
「了解している、まあ、入ってきたらそっちに連絡する」
「できれば…入る前に撃退してくれるのが一番なんだが…」
「そこまでは…俺でも判断が難しいよ…入ってくるだけで敵か一般人かなんてな…」
そう言うと、外の探索に集中しなおす
「今のところは…ただ風が気持ちいいだけだがな…」
何も異物感が混じらない風は気持ちいい、おかしな殺気とか、いやな気配がない風は…
「今のところは敵意やそれに順ずる気配は風には乗っていないよ、これから先は俺がここにいるから、この近くでなら寝ててもかまわんぞ?」
「そうもいかない、我々にも立場というものがある、協力者がいるからといって任せ切りにはできない」
「そうかい…まあ、適度に休息を…!」
これは…一種の敵意!?
「馬鹿な…早過ぎる…!」
その気配の位置を探ると、そう遠くはないが…視界には入らない
「この暗さでは識別できんな…しかも…こっちには向かっていない?」
その向かう方向はこちらとは真逆
「別件ならばいいのだが…あの敵意、俺に向けられていたような…?」
感じからして、その敵意は俺に向けられていたような気もした
「気のせい…だよな?」
しかし
「!」
さらに離れた位置から、今度は間違いなく俺に向けて敵意が送られる
「これは…まさか…トゥスクルがらみでは…ないだろうな…」
「どういうことだ!?」
「今の敵意は…間違いなく俺に向けられたものだった…」
「しかしその可能性は低いだろう、トゥスクルの人間がここにいることがわかったのはごく最近だ、それが何故脅迫の材料になる?」
「そうだな…まあ、敵がトゥスクルに雇われた傭兵だったころの俺に恨みを持っている可能性は高い…やはり、この国があった世界のことではないな」
「そのようだな…戦闘はお前に任せるからな?」
「ああ、もしそうなったら、われら御神の剣士とトゥスクルの将が、スクールの人間すべてを守って見せるさ、五体満足で生き残ってな」
もはや敵意は感じない、これ異常ないほど清々しい風が、今の敵意に緊張したままの俺を弛緩させて通り抜ける
「とりあえず…明日何か起きるという確証は…得たな…」
風の気持ちよさを感じ、その日はそれ以降何もなかった
翌日の朝になり、朝食はほどほどに済ませ、移動開始
「俺は仮眠を取る、任せたぞ」
車に乗り込むや否や、偽りの寝息を立てるぐらいである、仮眠ゆえに意識ははっきりしているが、体を完全に弛緩させ目を閉じるだけでも、完全に寝るのには劣りこそするが疲労回復、霊力の回復効果が得られるので、こういうときにはこちらの睡眠のほうが多い
「完全には寝てないな?」
「当たり前だ、意識を落としては、その余波が残るからな…」
ようは起きた直後は思考がすっきりしないあれである
そのまま、弛緩状態に戻る
到着と同時に覚醒、緊張状態に戻る
「やはり…!大きな気配は4つ、それ以外の小さいのが数十…」
「大きいうちの一つは…屋上!」
見上げる
「俺が向かう、トウカと恭也はフィアッセに、その他はティオレさんを!」
そのまま、跳躍し、壁をけり、さらに風をけり、屋上へ
「お前だな…?昨日俺を見ていたのは」
「そうだ…気づいていたか…七夜彰!」
槍使い!
「そういえば…俺の相手で槍使いだったやつはすくねえからな!」
狼牙に手を添える
「悪いが、コンサートをちゃんと聞きたくてな…早めにしとめる!」
狼牙の、柄の裏に隠している飛針を放る
「ふっ!」
「見抜いたか…」
「しゃらくせえまねするじゃねえか!」
そのまま、こっちに向かってくるが
「無為!」
縦の斬撃を体を逸らしかわした直後に
「許せよ」
右腕を飛ばすが
「ひゃあはあ!」
「!ちっ!?」
後ろに跳躍し、左腕だけで振るわれる槍を避ける
「この野郎…さては…麻薬の一種だな!?完全に落とされるまで戦い続けるのか!」
おそらくは襲撃者全員がそうだろう
「ちっ!」
こうなれば…
「殲滅は避けろといってたな…制圧ならば!」
ようは、殺してはいけないけれど戦闘不能にはしていい
神速で左腕を落とし
「ひっ!あひゃあ!」
それでも噛み付こうとするそいつを後ろから拘束し、頚椎を圧迫、意識を奪う
「麻薬が切れるころには、相当ひどいことになっているかもしれんが、怨むのならば、俺ではなく、襲撃をかけた自分自身を怨めよ?」
ついでに足の骨を逆方向に捻じ曲げておき、立てなくする
「よし…これで完全に制圧は完了…!」
下から金属の激突音!?
「くっ!」
急いで向かう、激突地点は…三階廊下!
「ひいっ!ひゃはあああ!」
「彼奴…何か使っておるな!?殺すか気を失うまで、戦い続ける化け物もどき!」
「そのとおりだ…大剣使いか…俺は槍使いだったけどな…」
下では、恭也と何者かが戦闘開始、美由季は今のところ手空き、美沙斗は向かい側の廊下で、小太刀使いと戦闘中のようだ
「某は大丈夫ですから!他の方の増援を!」
「承知!」
美沙斗のほうに加勢に向かう
「!?」
美沙斗のところにつくや否や、後ろからの殺気が向けられ、それを防ぐ
「気づかれたか…気配は極限まで消したはずだが…」
「それだけ殺気を放てばな…」
美沙斗と背を合わせる
「思いのほか、彼奴等、できるぞ」
しかし、神速に入れば、かなりのずるがきく
「ふっ!しっ!」
飛針から、鋼糸を続け、拘束
「もらった!」
一瞬で、両腕両足の間接をはずし、頭を打ち、気絶させる
「君は恭也のところに、敵の数が多い!」
「士郎は…別の場所で一騎打ちか…あいつなら大丈夫だよな…!」
地下に降りる
「ふっ!」
飛針を放る
「彰か!」
「ああ、加勢する…思いのほか敵が多い…暗殺者もどきまでいたぐらいだからな…」
「ああ…こいつらも結構できるぞ…」
「…いつぞやの…死人か…」
「し、びと?」
「すでに死を受け入れ、死以外の結果で止まることはない存在だ…」
「なんだって!?」
「それゆえ…痛みに屈することもなく、間接を外そうとも首だけで噛み付こうとする」
「それじゃあ…」
「恭也は上に、他の皆を手伝ってくれ」
「解った…お前は?」
「こいつらを片付ける…汚れるのは俺だけで十分だ…」
「俺も加勢する、命まで奪わなくても、落とせばいいんだろう?」
「それは…そうだが…」
だが、それでは覚醒した後に同じ結果があるだけだ…
「俺はそれで行くが、お前にまで押し付けたりはしないよ」
「そうかい…まあ、せいぜい殺さないように気をつけるか…」
二人同じ構えを取り
「「御神不破流の前に立ったこと、不幸と思え!」」
同時に地を蹴る、ここから先は制圧が難しいだろうが、極力死者は出したくないな…
「はあああ!」
右腕を切り飛ばそうとも、左腕で喉を掴もうとする
「ふっ!」
胴を蹴り、間合いを取り
「はぁっ!」
鋼糸で縛り
「疾!」
完全に落とす
「くっ!」
「恭也!」
すぐに、喉を掴んだやつの腕を切り落とす
「あいにくだが…俺の不殺は、生きているだけ、死んだほうがまだましと思っても怨むなよ!」
そう言い放つと、神速に入る
「一段での持続時間は、ざっと30秒!」
5人ほど叩きのめしたところで、時間切れか
「あと…10人か…」
死人って言うより、強化に狂化を加えたようなものか…人の内なる獣を起こしたとか言ってたやつもいたな…ニヴェのことだが…
「ちっ!さっき落としたやつらもこっち向かってるぞ!」
「どうする?」
「やはり…殺すしか…ないのか…?」
考える間にも連中はこちらに向かってくる
「恭也…血路は開く…トゥスクルの兵で手空きのがいたらこっちにまわしてくれ…」
「解った…それしか…ないんだな?」
「こうなったやつは…殺すことが唯一の救いとなるようなものだ…死ぬまで誰かの命を狙い続けるように改造されてしまった人間の末路はそれしかない…」
どこの国かは知らないが…ゆるさねええ!!!!
「疾!」
一人を両断するも、その上半身だけでこちらに襲いかかろうとする
「もう、眠れ…」
その頭を両断する
「おおおお!」
すぐさま、3人を解体する
「行けええ!!恭也!」
振り返らずに上に走っていく恭也
「さて…」
振り返る、血走った目、開きっぱなしの口、そこから漏れるは怨嗟か、それとも懇願か
死ねと繰り返し、その途中に殺してくれという単語が入る…
「安心しな…いま、楽にしてやる!」
戦場ではこういう兵を用意するものも多い…質がかなり落ちるが、もともとできの悪い兵ならば、死を恐れず、往生際の悪さはかなり高くなるからな…
もはや、迷いなく殲滅戦に移る俺に、この程度の死兵共では、死以外の選択肢はなかった
「殺されるその一瞬だけが…お前らにとっては至福か…」
切り裂かれ朽ち果てるそのときに口から漏れるのは、感謝という名の…呪詛
「ありがとうといいながらも…それが最大の呪詛となる…か…」
「彰!」
「トウカか…やつは?」
「警備の者共が連れて行った」
「こいつら、解るよな?」
「ああ、殺すしか…ない!」
それも、解体するしかないという…どちらにとっても不幸なだけという兵だ
「このような策、平気でやるとは…」
そこにいた兵が、物言わぬ肉の塊と成り果てるのに、そう時間はかからなかった
「せめて、安らかなる眠りに…」
朱雀を持ってその死体を焼き払い、そのまま、朱雀は通用門から、外に出、空へと登っていった
「あの装備…覚えてるか?」
「ああ…あの装備…ナ・トゥンクの兵のものだった…」
「しかし…何故?あの国は既に武装蜂起によって壊滅したというのに…」
「おそらくは…その残党の一部が蜂起し、この国をのっとろうというのだろう」
「ふざけやがって…」
上の階に戻る
「どうなった?」
「殲滅したよ…死体は焼却して、空に還した」
「そうか…しかし…どこの国だ?」
「俺たちが知る国だよ…ナ・トゥンク…かつて、武装蜂起によって壊滅した国だ…しかし…何故その国の兵が?」
そもそも、あの死兵もニヴェが作り出したもの…ならば、シケリペチムの兵のはずだ…あの国も壊滅したはずだが…
「残党がどこかの国に残っていたのだろう…」
「そうかも知れぬな…とりあえず、目を覚ましたら、アジトを聞いて…」
「その必要はない…やられたよ…まさか残っていた兵すべてを倒されるとはね…こちらに来て、あのような薬まで手に入れ、それですら無効化されるとはね…」
「貴様が…連中の将か?」
「いかにも…あのお方は約束してくれた…このコンサートをつぶせば兵を増やし、国を乗っ取る手伝いをしてくださると…!」
「そのお方ってのが何者か、詳しく聞かせてもらおうか?」
「話すと思うか!」
手裏剣をはじく
「飛び道具で、俺を抜けると思うな?」
しかし
「ぐっ!?」
「エリス!」
銃声と同時に、そいつの腕に風穴が開く
「ちっ!」
そのまま、もう片方の関節も外し
「はいてもらおうか、すべて!」
拘束させる
「さて…もう敵性存在はいないようだ、コンサート開始は問題ないよ」
風が教えてくれる
「解った、準備完了まであと一時間といったところだね…」
「こいつに関してはそちらに任せる、何かはいたら俺に教えてくれ」
「わかった、そちらにとっても無関係というわけではなかったようだしな…」
そして、最高の特等席=舞台袖で、コンサート開始を待つ
「彰、そういえば血が。」
「ああ、そういや一回だけかすっちまってたな…」
額から出血していたことにいまさら気づく
「って、額からの出血って派手なはずだよな…気づかなかった…」
頭に包帯が巻かれる
「他に攻撃受けた場所は?」
「いや…特にはないはずだが…」
左肩に鈍痛
「こっちもか…この程度なら絆創膏で足りるな」
一応、しっかりと止血し、その上から包帯を巻く
「こっちは確かに浅かったな…」
回避し切れなかったのはそれだけか?
いったん、自らの身体状況に集中してみるが、傷があるのはそれだけだった
「よし、っと、そろそろ開演だ」
目を閉じ、その歌に耳を傾ける
「いい…歌だ…」
こういうコンサートにありがちな、気取ったような歌ではなく、普通に歌えるような、それでいて、心にしみこむそんな歌…こういう歌が歌えるものはそう多くはいないだろう…そういうところからも、このコンサートを楽しみにしているものの多さが納得できる
「本当に…いい歌というのはこういうものなんだな…」
来年からこっちにも来てくれねえかなあ…このスクールの皆さん…
「次で最後か…あっという間だな…」
最初はフィアッセがソロのようだな…
「長い間悩んだ寂しさと人の心」
静かに心に染み込んで行く…癒されるようだ…
数人が加わりだした
「だから広げた手を青い空に」
こういう歌を聴くのは嫌いじゃない…心に染み入る、癒される歌…
「本当に…歌ってのは人を癒せるものなんだな…こういう歌を聴くと、改めて実感する」
「そうだな…俺も、久しぶりに聞くからな…フィアッセの歌は」
そして…
「終わっちまったか…できればもう少し聴いていたい気もしたけどな…」
ホテルまで送る
「それじゃあ、俺たちの仕事は終わりか」
携帯を一台だけ購入してあるので、いつでも俺に連絡が届くようにはなっている
「俺は、外交の仕事で一ヶ月、この日本にとどまることが決まっている」
「私と彰さん、トウカさんは、外交のためこっちでお仕事です」
「そういえばそんなことを言っていたな」
翌日、翠屋でバイト中に
「よう!昨日は何や大変やったそうやないか!俺も歌はきいとったけどなあ…あの歌聴くためやったらいくらでも手伝ったのに…」
「そこまでお前らに頼りはしねえって…そっちのが?」
「せや、調印、始めよか?」
「そうだな、エルルゥ!」
テーブルの一つに着き
「では、この書類に四人分の血判を」
親指を軽く切り、その血で判を押すというあれだ
「これで、ルーシエラとトゥスクル、エレンシアは同盟関係にあるということになるな」
「せやな…これで戦争も減ればいいんやけど…」
「彰!いるか!?」
「エリス!?」
確か、出立は明後日だったはずだが
「理由と、裏についてる国がわかった」
「早かったな…」
「香港警防仕込の拷問術でね…五分も持たなかったかな?」
「美沙斗も来ていたのか…」
「ああ…」
「で、その相手の国は?」
「シケリペチム」
「そうか…」
あの国か…
「長きに渡る因縁、決着をつけるときが来たようだな…」
「そのようだな…オボロ!」
「承知!兄者を通し同盟国に語りかけてみる!」
相変わらず、俺とはシンクロ率高いなあ…あいつは
「どうするんだ?」
「同盟国全ての力を終結し、シケリペチムに…制裁を加える!」
「そもそも、あの国がどういう国かわかってますか?」
「いや…」
「今回、極力捕獲しろという指示が出ていたんじゃ?」
「そういっていたが…」
「あそこは、そうやって捕獲したものを奴隷として調教、他国に売りさばくことを国益としている国だ、我々も何度か刃を交えたが…ついに決着つかずのままあの国がこちらに来てしまったのだ…もともとは武装国家で、トゥスクルに攻め込んだときに返り討ちにして…領土化したのだが…他の国…旧ナ・トゥンクという国の人間たちが起こした武装蜂起で、体制が変わったのだ…」
「その決着…つけるべきときが来たようだ…」
一度は沈静化したのだが…ハクオロがある一件により、皇をしりぞいている間に、再度武装蜂起が発生、結果として、昔のナ・トゥンクの体制になってしまった…その後何度も刃を交えたが、決着つかず、結局、にらみ合ったまま、例の時空変動が起きたという訳だ
「仕掛けるのは…こっちのとの調印が終わる前でいい!俺以外の将を送れ!」
そう言い放つと
「悪いが、ガヤック」
「任せとき!さっさと本国戻って、増援手配しておく!」
しかし、ハクオロは、同盟を重視したのか、戦闘は全ての同盟関係が成立してからということで、俺は日本にくくられることとなった、その間は、翠屋で住み込みのバイトだ
「向こうが言い出した期限まで後三日だ…」
そんな時期まで来たというのに、国民投票やってんのかよ、おっさん方
「もし、連絡がないようならば、同盟についてはなかったことになるけどな」
「そうはならないことを期待したいね」
そして、とうとう期限が切れようかという日になってようやく、国民投票が開始された、告知から執行までがわずか一日という、やる気がまるでなかったことを証明するかのようなやり口だったが、それでも、一応は投票が終わり、明後日になって、再度、議事堂へ
「投票結果、8割が賛成ということで、決が取れました…」
「では、同盟には問題がないということでかまいませんね?」
ある程度は威嚇の意味もこめた言い方でそう言う
「はい、では、調印を…」
決まりさえすれば、話は早かった
すぐに調印が結ばれる
「では、我々はこれで、本国のほうで、何かよくないことが起きるかもしれないので」
そう言うと、すぐに、トゥスクルに向かう
「調印は完了した、シケリペチムも本格的に、日本進行を考えているようだ!」
「あの国を領土とするのが、第一目的か…」
「例の脅迫状は…襲撃を前提として、挑発のつもりだったようだ」
「そこに集まる戦力を、奴隷とするのが目的だったようですね…」
「了解した、もはや迷う必要はない!全国の準備が整い次第、シケリペチムを攻撃する!」
「「「「「「承知!」」」」」」
全員が下がる
「エルルゥ、そういえば、どこまで教わった?」
「桃子さんには及びませんけど…一通りは」
「そうか…今晩あたり、膳に出してみてはどうだ?」
「そのつもりです」
「そうか、楽しみにしてるぜ?」
「あまり…期待はしないでくださいね?」
炊事場に向かっていくエルルゥ
「さて、俺は…」
「彰!どうだ?暇なら俺と手合わせしねえか!?」
「クロウか…いいぜ、俺も自分の力を試したいと思ってたところだ!」
外に出る
「本組み合いだからな?加減したら痛い目見るぜ?」
「上等だ…」
しっかりと二刀に手を添える
「これでも、毎日同門の連中と手合わせしてきたんだからな?」
地を蹴る
「ふっ!」
「せえりゃ!」
二、三度ぶつかった直後
「次で終わりだ!」
神速を連発し、完全に死角に入る
「!?」
「これで決着だ!」
首に刃を当てる
「くっ!俺の負けかい…」
「あいにくだが、この程度の動きに翻弄されてたんじゃ、御神の剣士には勝てないぜ?」
これだけ連発してもたまにかわされるぐらいだからな
「まあ、神速は、反応速度と勘のよさ、経験があれば、それなりに、反応できるぜ?」
実際、回避したやつもいないわけじゃない
「まあ、後は己の技量で補えば、クロウレベルでも反応できないときはあるがな」
人間では反応できない速度で踏み込んだからな…鬼とかは論外、反応速度が尋常じゃない
「さて、これで終わりだな…神速連発しすぎた」
部屋に戻り、寝転がる
「ふう…しばらくは、あまり戦闘関係の訓練はしないほうがいいかもしれないな…」
そして、夕餉の時間となり
「普通に…膳の上に乗っけてきたな…」
「なにか…問題ありましたか…?」
「いや…ないけどさ…これは食後に食ったほうが…」
「それもそうですね…」
「じゃあ、いただくとするか…!」
魚と野菜がメインで、あまり肉が食膳に上らないのは、まあ当たり前か
軽く食い終わり、エルルゥ作のシュークリームへ
「…どれ…」
一口
「ふむ…桃子さんのとは比べるべくもないが、これはこれでなかなかに…」
「そうだな」
俺とオボロの第一感想
「ん♪」
アルルゥもいたくお気に入りのようだ
「美味しいです…」
ユズハからも好評
「なかなかに…これは向こうの菓子かい?」
「ああ、洋菓子…向こうの国があった世界の別の国発祥の菓子だ」
俺はさっさと食い終わる
「ふむ…こちらの菓子に比べて、甘さもちょうどよいし、こういう菓子もあるのだな…」
「そりゃあな…こっちの菓子は砂糖固めただけの菓子か、砂糖漬け、蜂蜜漬けだからな…」
甘いのはしょうがない
「桃子さんのに比べればまだまだだけどな」
「あの人とは比べるなって…全ての菓子職人がかわいそうになるくらい美味いんだから」
「それもそうだな…あそこ以外で食った菓子に比べれば美味くできてる」
「一応比較はしてみたんだな…」
「ああ…霞んで思えたぜ…」
「さすがは桃子さんだな…」
「しかし、誰なんだ?その、桃子さんという人は」
「エルルゥの菓子の師匠で、俺が住み込みで働いてた喫茶店の人だ」
「その旦那が強い強い、子供も結構強かったよな?」
「恭也は…もっと強くなるよ、美由季もだな…美由季は、大器晩成型だな…成長は遅いけど、その才能は、士郎や恭也を超えるかもしれん…恭也は…不破流を継ぐにふさわしい実力者だと思うよ…あの親子はかなり強い、戦争に巻き込んじゃいけないタイプだけどな」
「そうだな…」
「そうか…一度会ってみたいものだな」
「行けばいいじゃないか、喫茶翠屋、いけば美味い洋菓子と、茶が待ってるぜ?」
「彰さんは行けばすぐにバイトですけどね」
「ははは!それでもいいさ、食えるんだし」
そう言い笑いつつも、どうしても次の戦、過酷なものになるだろうと考えていた…
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コメント

うぅw

やっぱり難しい
(pXεX。q)

小説は不向きなんですよぇf^_^;

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Author:七夜彰
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